細胞生物学:ストローマ細胞でのYAP/TAZ活性はcGAS–STINGを制御して加齢を抑制する
Nature 607, 7920 doi: 10.1038/s41586-022-04924-6
加齢は細胞老化の誘導と密接に結び付いているが、その理由はほとんど分かっていない。重要な課題は、本来は老化を抑制しているが加齢の間に失われる、加齢への対抗に機能的に関連する経路を特定することである。今回我々は、加齢組織の構造的な劣化や機能低下を、細胞の機械的シグナル伝達のマスターエフェクターであるYAPやTAZの機能低下と結び付けた。YAP/TAZ活性は、ストローマ細胞の生理学的な加齢の過程で低下し、これらの細胞でYAP/TAZを遺伝学的に不活性化してそのような低下を模倣すると、加齢の促進が引き起こされた。逆に、YAPの機能を持続させると老齢の細胞が若返り、また生理的な加齢や、機械的に異常な細胞外マトリックスによって引き起こされる加齢の促進のいずれかに関わる加齢関連形質の出現が抑えられた。YAP/TAZの不活性化によって誘導される加齢の形質は、組織老化の誘導に先立って起きた。これは、cGAS–STINGシグナル伝達がYAP/TAZのメカノトランスダクションによって抑制されるために起こり、STINGが阻害されることでYAP/TAZ不活性化後の組織老化や早期加齢に伴う組織変性が防止されるようになる。機構的には、YAP/TAZを介したcGAS–STINGシグナル伝達の制御は、核膜の完全性を保つというYAP/TAZの予想外な役割に依存しており、少なくとも一部はラミンB1とACTR2の直接的な転写調節を介して行われる(ACTR2は核周囲のアクチンキャップ形成に関与する)。これらの知見は、YAP/TAZのメカノトランスダクションの低下は、自然免疫の中心的な柱の1つであるcGAS–STINGシグナル伝達を活性化させてしまうことで加齢を誘導することを示している。従って、YAP/TAZの機械的シグナル伝達の持続やSTINGの抑制は、老化に関連する炎症を抑制し、健康的な加齢を改善するための有望な方法となり得る。

