Article
神経科学:海馬場所細胞はナビゲーション中にゴールに向かうベクトル場を持つ
Nature 607, 7920 doi: 10.1038/s41586-022-04913-9
海馬の認知地図は、なじみのある環境内で、際立った地点に向かったり、そこから離れたりするナビゲーションを支えている。海馬が、外界を中心に置いた座標で空間位置をどのように符号化しているかについては多くが知られているが、それが柔軟なナビゲーションを支える仕組みは、あまり分かっていない。今回我々は、ハニカム迷路でゴールに向かいナビゲーションを行うラットで、海馬CA1場所細胞を記録した。この迷路では、ゴールへの直接経路と間接経路を介したナビゲーションを検証し、進路選択の各地点での場所細胞の方向性を評価することができる。場所場(場所受容野)は、環境内に散在する沈点(sink)に収束したベクトル場を特徴とする、方向性のある強い分極を示した。これらの「収束沈点(ConSink)」はゴール地点の近傍を中心に分布しており、そのベクトル場の総和はゴールに収束して、強力なナビゲーション信号を提供していた。ゴールの位置を変更すると、ConSinkと新たなゴールに向かうベクトル場の移動が引き起こされた。このハニカム迷路では、場所細胞の活動から空間表現と空間活動を独立に観測でき、空間活動が空間表現とどのように関連しているかが分かる。我々の結果は、海馬が柔軟なナビゲーションを支えるためにベクトルに基づくモデルを作り出しており、動物が環境内のどの地点からも目的地への最適な道を選べるようにしていることを示唆している。

