Article

分子生物学:病原性のDNA塩基除去修復による細胞質染色体の切断

Nature 606, 7916 doi: 10.1038/s41586-022-04767-1

染色体粉砕(クロモスリプシス)は、腫瘍発生を促進し先天性疾患を引き起こす、壊滅的な変異過程である。染色体粉砕は、微小核や染色体橋と呼ばれる核の異常から生じる。これらの構造は自発的に破裂する脆弱な核膜と関連付けられており、クロマチンが間期の細胞質にさらされるとDNAの損傷につながる。今回我々は、こうしたDNA損傷の大部分を説明する機構を明らかにする。微小核はRNA–DNAハイブリッドを大量に蓄積し、これらのハイブリッドがADAR酵素(adenine deaminases acting on RNA)によって編集されて、デオキシイノシンを生じることが分かった。デオキシイノシンは次いで、DNA塩基除去修復(BER)グリコシラーゼの1つであるN-メチル-プリンDNAグリコシラーゼ(MPG)によって脱塩基部位へと変換される。そしてこれらの脱塩基部位は、BERエンドヌクレアーゼであるAPエンドヌクレアーゼ(APE1)によって切断され、DNA複製によって、あるいはもう一方の鎖に狭い間隔で切れ目が生じた際にDNA二本鎖切断へと変換され得る、一本鎖DNAの切れ目となる。このモデルは、MPGが、RNA–DNAハイブリッドのDNA鎖からデオキシイノシン塩基を除去する能力を持つことを予測しており、我々はこれを、精製されたタンパク質およびオリゴヌクレオチド基質を用いて実証した。以上の知見から、染色体粉砕を生じる上で重要な段階である、微小核染色体の断片化の機構が明らかになった。真核生物の細胞質は、正常な染色体をどれでも切断するのではなく、今回示したDNA塩基の異常のような既存の欠陥を有する染色体のみを損傷していると、我々は提唱する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度