化学:コンピューターで設計された、化学廃棄物から薬剤へのリパーパシング
Nature 604, 7907 doi: 10.1038/s41586-022-04503-9
化学工業によって大量の化学廃棄物が生み出され続けているため、こうした不要な化学廃棄物の少なくとも一部を有用製品に生産的に逆変換する「循環化学」構想の考案が必要とされている。一部の有害化学物質群の分解には大きな進歩が見られるにもかかわらず、廃棄物基質を有用生成物に変換する「循環の輪を閉じる」取り組みは、まだ断片的であり、よく知られた分野に集中している。少数組の廃棄物基質であっても、少数ステップで生じる可能性のある生成物は数百万種に達し、そのそれぞれが複数の経路で合成可能で密につながったネットワークを形成しているため、多様な化学廃棄物からどの有用生成物が合成可能かを総合的に分析することは困難である。そうした合成を全てたどって、プロセス化学と「環境に優しい」化学の基準を満たすものを選択することは、ほぼ間違いなく、化学者の認知力を超えている。今回我々は、幅広い合成知識を備えたコンピューターをこの難題への取り組みに役立てることができる方法を示す。我々は、順合成Allchemyプラットフォームを用いて、商業スケールでリサイクルされる約200種類の廃棄化学物質から広がる巨大な合成ネットワークを作成し、これらのネットワークから約300種類の重要な薬剤や農薬につながる数万通りの合成経路を検索し、受け入れられている持続可能な化学の基準に従って、これらの合成をアルゴリズムでランク付けした。我々は、これらの経路のいくつかについて、その妥当性を、「オンデマンド薬剤合成(pharmacy on demand)」フローケミストリー・プラットフォーム上での工業的に現実的な実証を含めて、実験で検証した。「廃棄物からの有用物質合成(waste-to-valuable)」のコンピューターアルゴリズムを広く採用することで、通常なら貯蔵コストや廃棄処理コストがかかったり、環境に対する危険をもたらすことさえあったりする化学物質の、生産的再利用が加速される可能性がある。

