ナノスケールデバイス:共有結合性の単結合周りの、自律的に燃料を用いる方向性回転
Nature 604, 7904 doi: 10.1038/s41586-022-04450-5
生物は、アデノシン三リン酸合成酵素や細菌の鞭毛モーターといった回転モーターなどの、自律的に化学燃料を用いる分子機械を通して動作する。長年にわたって化学者たちは、化学的に駆動される方向性回転要素を有する、類似した分子構造を作ろうとしてきた。しかし、単結合の周りで自律的に360°の方向性回転ができる合成モーター分子の実現は困難であることが分かっており、これまでの設計では、自律的な燃料注入か方向性のいずれかが欠けていた。今回我々は、1-フェニルピロール2,2′-ジカルボン酸(1a)が触媒反応によって駆動されるモーターであり、化学燃料からエネルギーを連続的に変換して、2つの芳香環をつなぐN–C共有結合の周りで、これらの環の360°の方向性回転を繰り返し生じさせ得ることを示す。1aをカルボジイミドで処理すると、2つの環の間での分子内無水物形成と無水物の加水分解の両方が絶え間なく起こる。いずれの反応も速度論的にゲーティングされていて、方向の偏りを引き起こす。従って、モーター分子によるカルボジイミドの水和の触媒反応によって、N–C結合周りの正味の方向性回転が連続的に駆動される。回転の方向性は、無水物の加水分解を加速させる添加剤の掌性と燃料の掌性の両者によって決まり、容易に逆転する。燃料分子の97%以上が化学エンジンサイクルを通して消費され、キラリティーを一致させた燃料と添加剤を用いると、その方向の偏りは最大で71:29に達した。すなわち、このモーターは3~4回に1回、方向を「間違える」といえる。今回のモーター分子は26個の原子からなる単純なものであることから、作業や課題の遂行に向けて、構造の最適化や、他の構成要素と接続され得る誘導体の開発に期待が持てる。

