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神経科学:皮質集団活動は視床下部への出力を介して社会的競争を調整する

Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04507-5

大半の社会的動物種は自発的に順位制を確立し、これによって攻撃が減少してエネルギーが節約されるが、各個体が自らの順位をどのようにして知るかは明らかになっていない。脳がどのようにして社会的順位を表現し、そうした表現に基づいて行動を導くかについては、最近ようやく分かり始めたところである。齧歯類やヒトでは、内側前頭野(mPFC)が社会的優位性に関与している。しかし、mPFCが厳密にどのように相対的な社会的順位を符号化し、どの神経回路がその演算を仲介しているかは知られていない。今回我々は、マウスが報酬を巡って争う社会的競争試験と、標識のない複数個体を追跡するコンピュータービジョンツール(AlphaTracker)を開発した。隠れマルコフモデルを一般化線形モデルと組み合わせることで、mPFCの集団活動から社会的競争行動を解読することができた。また、mPFCの集団動態から、社会的順位と競争の結果を予測することができた。さらに、外側視床下部に投射するmPFC細胞が、報酬を巡る競争の際に優位行動を促すことが示された。従って、今回の研究は、mPFCが社会的優位性のトップダウン調整を行う、皮質–視床下部回路を明らかにしている。

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