Article

生化学:クラスDに属する菌類GPCR二量体Ste2の活性化機構

Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04498-3

クラスD1に属する菌類Gタンパク質共役受容体(GPCR)Ste2は、膜貫通ヘリックス群の配置が哺乳類GPCRと異なっており、ヘテロ三量体Gタンパク質Gpa1–Ste2–Ste18との共役の仕方も違っている。さらに、Ste2はDRYやPIF、NPXXYのような、クラスA GPCRの活性化と関連している保存された配列モチーフを欠いている。このことから、Ste2は活性化機構も異なっているだろうと考えられてきた。今回我々は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来Ste2のGタンパク質がない状態について、天然のアゴニストα因子と結合した場合とアンタゴニストの1つと結合した場合の2つのコンホメーション、それにリガンドなしの場合のコンホメーションを決定した。これらの構造から、Ste2はまさに、他のGPCRとは異なる方式で活性化されることが明らかになった。不活性化状態では、膜貫通ヘリックスH7の細胞質側末端ははっきりした構造をとっておらず、ヘリックスH1–H6の間に詰め込まれていてGタンパク質の共役部位をふさいでいる。アゴニストが結合すると、H6とH7の細胞外末端が6 Å程度外向きに動く。細胞内表面では、Gタンパク質共役部位をふさいでいたH7の非構造領域が外向きに20 Å動き、さらにH6が12 Å内向きに移動することによって、Gタンパク質共役部位が形成される。これは、アゴニストの結合によるH6とH7の動きがGタンパク質の共役を促進するという、GPCRでは独特の機構である。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度