免疫学:T細胞増殖の合成ドライバーを探すためのゲノム規模スクリーニング
Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04494-7
養子細胞療法のために患者の自己T細胞を改変することは、複数タイプのがんの治療に変革をもたらした。しかし、奏効率や治癒率を高めるにはさらなる改善が必要である。CRISPRを用いる機能喪失スクリーニングは、T細胞機能の負の調節因子に限定されており、ゲノムに恒久的な改変を加えることで安全性が懸念されている。今回我々は、T細胞機能の正の調節因子を、約1万2000のバーコード付きヒトオープンリーディングフレーム(ORF)の過剰発現を介して見つけ出した。最上位にランクされた遺伝子は、初代ヒトCD4+およびCD8+ T細胞の増殖と活性化を増強して、インターロイキン2やインターフェロンγのような重要なサイトカインの分泌を高めた。さらに、我々はORFを操作したT細胞で、トランスクリプトームと表面抗原のハイスループット定量化のための単一細胞ゲノミクス法であるOverCITE-seq(Overexpression-compatible Cellular Indexing of Transcriptomes and Epitopes by Sequencing)を開発した。最上位にランクされたORFであるリンホトキシンβ受容体(LTBR)は、通常は骨髄細胞で発現しているが、リンパ球では発現していない。LTBRをT細胞で過剰発現させると、転写およびエピゲノムの重度のリモデリングが誘導され、カノニカルなNF-κB経路の構成的活性化による慢性的刺激状況で、T細胞のエフェクター機能の増強と、疲弊への抵抗性が引き起こされた。LTBRなどの上位にランクされた遺伝子は、キメラ抗原受容体T細胞やγδ T細胞の抗原特異的応答を改善し、それらが今後の臓器横断的(tumor-agnostic)治療法となる可能性が明らかになった。我々の結果は、合成型の細胞プログラムの誘導によって次世代T細胞療法を改善するための複数の戦略を示している。

