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神経科学:再現性のある脳規模関連研究には数千人の試料が必要である

Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04492-9

磁気共鳴画像法(MRI)は、さまざまな能力を特定の構造(病変研究など)や機能[課題機能的MRI(fMRI)など]に再現性よくマッピングすることを通じて、ヒト脳に関する我々の理解を変えてきた。しかしメンタルヘルスの研究やケアでは、MRIによる同様の進歩を実現できていない。主要な難題は、脳の構造や機能の個人差と、複雑な認知やメンタルヘルスの表現型の間の関連を再現すること[脳規模関連研究(BWAS)]であった。こうしたBWASは、古典的な脳マッピングに用いられる試料サイズ(脳画像化研究の試料サイズの中央値は約25人)で行われてきたが、これは再現可能な脳–行動表現型関連付けには小さ過ぎる可能性がある。今回我々は、現在利用可能な最も大きな脳画像化データセット3種(試料サイズは計約5万人)を用いて、BWASの効果量と再現性を、試料サイズの関数として定量化した。BWASの関連は以前に考えられていたよりも小さく、その結果、典型的な試料サイズでは、統計的検定力が不足した研究、効果量の過大、再現性の欠如につながることが分かった。試料サイズが数千を超えるにつれて、再現率が改善され始め、効果量過大の程度は縮小した。(構造的MRIよりも)機能的MRIで、(メンタルヘルスアンケートよりも)認知テストで、(単変量解析よりも)多変量解析で、よりロバストなBWAS効果が検出された。広く見られるBWASの再現失敗は、集団副試料間で脳–表現型の関連や変動が予想よりも小さいことで説明できる。より効果の大きいBWAS以外の方法(病変、介入、個人内など)とは対照的に、BWASの再現性を確実にするには、数千人規模の試料が必要である。

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