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細胞生物学:肝臓の細胞内構造の調節は代謝恒常性を制御している

Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04488-5

細胞では代謝過程が複数の細胞小器官に区分されており、そのために細胞内の構造は複雑に見える。しかし、組織の本来の状況下でのこれらの構造は解明されておらず、その機能的重要性はよく分かっていない。今回我々は、無傷の肝組織(条件ごとに15の部分的もしくは完全な肝細胞)の大きな体積(2.8 × 105 μm3以上)中にある細胞小器官の三次元構造編成を、高性能化した集束イオンビーム走査型電子顕微鏡法による画像化と、それに続く深層学習をベースとする自動化された画像分割および3D再構築を用いて、高分解能(8 nmの等方性ピクセルサイズ)で解像した。また、痩せマウスおよび肥満マウスの肝組織中の細胞内構造の比較解析を行い、肥満マウスでかなりの変化(特に肝臓の小胞体で著しい)が見られることが明らかになり、小胞体シートの層状の積み重なりの顕著な崩壊を経て小胞体細管が非常に多い状態となっていることが分かった。さらに、細胞内構造を実験的に回復させて、それが細胞および全身の代謝に及ぼす影響を観察することにより、これらの構造変化の機能的重要性を実証した。我々は、肝細胞内の小胞体構造の構成が非常に動的であり、代謝状態と統合されていて適応的な恒常性と組織の健常性に極めて重要であると結論付ける。

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