Review

コロナウイルス:重篤なCOVID-19肺炎のヒトの遺伝学的および免疫学的決定因子

Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04447-0

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染は、重症化せずに済む個人が大多数だが、感染例の約10%では低酸素血症を伴う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎が引き起こされ、約3%は重篤な状態に陥る。これらによる死亡リスク(全年齢と性別を合わせて約1%)は小児期以降5年ごとに倍増し、男性では女性の約1.5倍高い。本論文では、重篤なCOVID-19肺炎に対する分子および細胞レベルでの決定因子について概説する。常染色体性TLR3欠損症やX染色体連鎖TLR7欠損症を含む、I型インターフェロン(IFN)経路に関わる分子の先天異常は、60歳未満の重篤な肺炎患者の約1~5%に認められるが、60歳以上の患者ではそれよりも少ない。IFNαやIFNβ、IFNωを中和する発症以前から存在する自己抗体は、女性よりも男性に広く認められ、70歳以上の重篤な肺炎患者の約15~20%に見られるが、70歳未満の患者ではそれよりも少ない。このように、重篤なCOVID-19肺炎症例の少なくとも15%については、説明可能である。気道上皮細胞からのTLR3依存性I型IFN産生、および形質細胞様樹状細胞からのTLR7依存性I型IFN産生は、SARS-CoV-2に対する宿主防御に不可欠である。年齢と性別に依存した要因がある中で、感染初期数日間の気道におけるI型IFN免疫応答が不十分だと、ウイルスが広がる原因となり、さらに肺および全身の炎症に至る可能性がある。

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