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コロナウイルス:SARS-CoV-2 B.1.1.529 オミクロン株の複製および病原性の低下

Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04442-5

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン(B.1.1.529)変異株が2021年11月に出現し、ヒト集団の中で急速に広がっている。最近の報告では、オミクロン変異株はワクチンが関連する中和抗体や治療用中和抗体をロバストに回避することが示されているが、このウイルスの病原性は明らかではない。本論文で我々は、オミクロン株の複製が、ヒトCalu3細胞やCaco2細胞でかなり減弱していることを示す。さらに機構について調べたところ、オミクロン株は、野生型SARS-CoV-2(HKU-001a)やこれまでの変異体と比べてTMPRSS2(transmembrane serine protease 2)の使用効率が悪いことが分かった。これは、オミクロン株の複製がCalu3細胞やCaco2細胞で低下していることの説明となる可能性がある。オミクロン株の複製は、野生株やデルタ(B.1.617.2)株の複製と比較して、感染させたK18-hACE2マウスの上気道および下気道の両方で顕著に減弱しており、その結果、肺の病態がかなり緩和されていた。野生型SARS-CoV-2、アルファ(B.1.1.7)株、ベータ(1.351)株およびデルタ株と比較して、オミクロン株による感染では、体重減少が最も少なく、死亡率は最も低かった。まとめると我々の研究から、SARS-CoV-2のオミクロン株のマウスにおける複製および病原性は、野生株や他の変異株と比較して低下していることが示された。

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