コロナウイルス:SARS-CoV-2オミクロン株はマウスとハムスターにおいて弱毒化している
Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04441-6
最近出現した、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン(B.1.1.529)変異株は、ワクチンや治療抗体の効果が低減する可能性が懸念される。B.1.1.529株に対するワクチン候補や抗ウイルス薬候補の効果を評価するためには、気道疾患の齧歯類モデルの前臨床実験系が重要である。今回我々は、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)によるSAVE(SARS-CoV-2 Assessment of Viral Evolution)プログラムのネットワークを用い、複数のB.1.1.529分離株について、免疫正常あるいはヒトACE2(hACE2)を発現するマウスとハムスターにおいて感染ならびに疾患を引き起こす能力を評価した。モデルデータではB.1.1.529株のスパイクタンパク質は、マウスのACE2に対してより強く結合できることが示されているが、129、C57BL/6、BALB/cおよびK18-hACE2トランスジェニックマウスでは、B.1.1.529株は、これまでのSARS-CoV-2変異株よりも感染性が低く、体重減少も限定的で、上気道と下気道のウイルス量が低いことが分かった。野生型とhACE2トランスジェニックハムスターにおける肺感染、臨床症状、病理についても、B.1.1.529株では過去の分離株やSARS-CoV-2の他の懸念される変異株より軽度だった。まとめると、複数のB.1.1.529分離株を用いたSAVE/NIAIDネットワークの実験から、齧歯類における本変異株の肺における病原性が低下していることが明らかになった。この結果は予備的に報告されているヒトの臨床データと一致している。