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量子物理学:プログラム可能な量子センサーによる最適計測学
Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04435-4
量子センサーは確立された技術であり、幅広い科学にわたって精密センシングの新たな機会を生み出してきた。量子増強に量子エンタングルメントを用いることで、量子物理学によって許容される基本的な精度限界に近づき得る、次世代センサーの構築が可能になる。しかし、こうした究極の限界に近づくために最先端のセンシングプラットフォームをいかに用いられるかを見いだすことは、未解決の課題である。今回我々は、量子情報処理の分野に由来する概念と計測学を統合して、量子力学の法則が課す基本的限界の近くで動作するプログラム可能な量子センサーを実験的に実現することに成功した。我々は、トラップイオン実験のセンシングタスクに最適な入力状態と測定演算子を実装する、パラメーター化された低深度量子回路を用いることで、これを達成した。そして、26個のイオンを用いて、従来のスピンスクイージングを1.87 ± 0.03倍上回る、基本的な検出限界の最大1.45 ± 0.01倍まで近づいた。今回の手法は、エンタングルメントを利用できるプロトコルを用いない従来の手法と比較して、所定のアラン偏差に到達するまでの平均化回数を1.59 ± 0.06分の1減らしている。さらに我々は、デバイス上で量子古典フィードバックの最適化を行い、同等の性能のプログラム可能な量子センサーを「自己較正」させた。この能力は、今回の次世代量子センサーが、デバイスやその雑音環境に関する予備知識なしに使用できることを例証している。

