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化学:適用範囲が広い膜輸送担体としてのホウ素クラスター

Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04413-w

親水性物質の膜透過は、治療化合物や標識化プローブとしての応用における課題となっている。これを解決するために、両親媒性荷電分子が古くから輸送担体として用いられてきた。しかし、そうした両親媒性担体は、凝集や非特異的膜溶解を引き起こす可能性がある。今回我々は、球状のドデカボレートクラスター、特にB12Br122−が、さまざまな親水性積み荷分子(分子量146~4500 Da)のアニオン性無機膜輸送担体としての役割を果たし得ることを示す。我々は、カチオン性ペプチド、中性ペプチド、アミノ酸、神経伝達物質、ビタミン、抗生物質、薬剤を、リポソーム膜を横断して輸送できることを示す。機構的輸送研究によって、担体の活性が、これらのクラスターアニオンの超カオトロピック性と関連していることが明らかになった。我々は、B12Br122−が、抗腫瘍剤モノメチルアウリスタチンF、タンパク質分解誘導キメラ分子dBET1、細胞骨格標識用として生細胞への送達に成功している毒性物質ファロイジンなどの、さまざまな生物活性小分子の細胞質ゾルへの取り込みに影響を及ぼすことを実証する。我々は、送達適用範囲が広く特徴的な今回の超カオトロピック性担体が、概念的に異なる、細胞生物学的、神経生物学的、生理学的、薬学的研究の出発点となると予想する。

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