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神経科学:前頭ニューロンが社会集団の競争的行動と生態学的特性を駆動する

Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-021-04000-5

競争的相互作用は大半の動物種の生態学的特性において不可欠な役割を果たしており、集団の行動に強い影響を及ぼす。個体は成功のために、利用可能な資源だけでなく、集団の他の個体の社会的順位や行動にも基づいて努力しなければならない。しかし、競争的相互作用や社会集団の行動を正確に駆動する単一細胞レベルの機構については、まだほとんど分かっていない。今回我々は、競争的に採餌を行うマウスの大規模コホートにおいて自然な集団パラダイムを開発し、その中で数千の個別の相互作用にわたって神経活動をワイヤレスで追跡した。その結果、集団の総体的な行動の追跡により、前帯状皮質のニューロンが、他個体に対する自らの社会的順位を適応的に表現することが分かった。社会的順位は、成功との密接な行動的つながりを示したが、これらの細胞はマウスの相対的順位と競争的行動を明確に分け、利用可能な資源、環境、その個体の過去の成功についての情報を統合して、意思決定に影響を与えた。我々は、多クラスモデルを用いて、これらのニューロンがどのように集団内で他の個体を追跡し、その後の成功を的確に予測したかを明らかにする。さらに我々は、神経調節技術を用いて、これらのニューロンが競争的努力に及ぼした条件的な影響、すなわち、その個体が集団の他個体よりも優位である場合にのみ努力を増やし、下位である場合は努力を減らしたことを示す。こうした影響は、他の前頭葉領域では観察されなかった。まとめるとこれらの知見は、競争的相互作用を適応的に駆動する前帯状ニューロンの存在と、集団の社会的・経済的な行動を仲介している可能性があると推定される過程を明らかにしている。

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