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コロナウイルス:SARS-CoV-2 T細胞免疫を誘導するためのCOVID-19ペプチドワクチン

Nature 601, 7894 doi: 10.1038/s41586-021-04232-5

T細胞免疫は、ウイルス感染の制御の中心である。CoVac-1は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のさまざまなウイルスタンパク質に由来するT細胞エピトープからなるペプチドベースのワクチン候補であり、Toll様受容体1/2のアゴニストであるXS15と組み合わせてMontanide ISA51 VGで乳化しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対抗するための強いSARS-CoV-2 T細胞免疫を誘導することを目指している。今回我々は、18〜80歳の参加者36人を対象に、CoVac-1ワクチンを単回皮下接種する第I相非盲検試験を実施した。主要評価項目は安全性であり、56日目まで解析した。CoVac-1が誘導するT細胞応答という点からの免疫原性は、28日目までは主要副次評価項目として、その後3か月目まではフォローアップ調査において解析した。重度の有害事象やグレード4の有害事象は観察されなかった。予想された局所的な肉芽腫形成は全ての試験参加者で観察されたが、全身性の反応原性は、見られないか軽度であった。多くのワクチンペプチドを標的とするSARS-CoV-2特異的T細胞応答が、全ての試験参加者で誘導され、それらは多機能性のCD4+ 1型ヘルパーT細胞やCD8+ T細胞を介していた。CoVac-1によって誘導されるIFNγ T細胞応答は、経過観察の解析中も持続し、SARS-CoV-2感染後や認可済ワクチン接種後に検出される応答を上回った。さらに、ワクチンによって誘導されるT細胞応答は、現在のSARS-CoV-2の懸念される変異株(VOC)による影響を受けなかった。まとめると、CoVac-1は良好な安全性プロファイルを示し、広範かつ強力で、VOCに影響を受けないT細胞応答を誘導し、これは、B細胞や抗体の機能不全患者を対象とした第II相試験において現在行われているCoVac-1の評価を支える結果である。

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