Article

神経科学:リバーストランスレーションによる小脳の飽和化ネットワークの特定

Nature 600, 7888 doi: 10.1038/s41586-021-04143-5

脳は体重の恒常性の中枢である。しかし、肥満症のますますの蔓延に歯止めをかけられない現況は、標準的な摂食経路以外に目を向け、体重制御に関する我々の理解を広げる必要性を浮き彫りにしている。今回我々は、リバーストランスレーションの手法を用いて、飽和化を促す神経集団を特定し、その解剖学的、分子的、機能的な特徴を明らかにする。偏りのない、課題ベースの機能的磁気共鳴画像法によって、過度の食欲を特徴とする遺伝的疾患の患者では、食物に対する小脳の応答が顕著に異なることが分かった。マウスでのトランスクリプトーム解析からは、前深部小脳核(aDCN)に、摂食や腸への栄養素注入によって活性化される、分子的・位置的に異なる複数のニューロンが存在することが明らかになった。これらのaDCNニューロンを選択的に活性化すると、代謝率の補償的変化を伴うことなく、1回の食餌量が減ることで食物摂取が著しく減少した。aDCNの活動は、線条体のドーパミンレベルを上昇させてその後の摂食に対する一過性のドーパミン応答を弱めることで、食物の摂取を停止させる。本研究は、過食の管理のための新たな治療標的となる可能性のある、保存された飽和化中枢を定義するとともに、行動に影響を及ぼす神経回路の特定に「臨床から基礎へ」の手法が有用であることを強調している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度