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コロナウイルス:COVID-19における時期尚早なTGFβ応答がNK細胞の抗ウイルス機能を抑制する

Nature 600, 7888 doi: 10.1038/s41586-021-04142-6

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こす一本鎖RNAウイルスである。COVID-19は急性で、多くの場合、自然寛解の経過をたどることを考えると、自然免疫系の構成因子が、ウイルス複製を制御して臨床転帰を決定する上で中心的な役割を担っている可能性が高い。ナチュラルキラー(NK)細胞は、RNAウイルスを含む広範なウイルスに対して顕著な活性を有する自然リンパ球である。COVID-19では、活性化された適応型の表現型のNK細胞の割合が増加するにもかかわらず、NK細胞の機能が変化している可能性がある。今回我々は、COVID-19でのウイルス量の減少はNK細胞の状態と相関していること、そして、NK細胞は感染した標的細胞を認識してSARS-CoV-2の複製を制御できることを示す。重症COVID-19では、NK細胞は細胞傷害性エフェクター分子を高発現しているにもかかわらず、ウイルスの制御やサイトカイン産生、細胞介在性細胞傷害に異常が見られた。COVID-19の疾患スペクトラムの時間経過を通じたNK細胞の単一細胞RNA塩基配列解読によって、独特な遺伝子発現シグネチャーが明らかとなった。インターフェロンによるNK細胞活性化の転写ネットワークには、顕著なトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)シグネチャーが上乗せされていた上、細胞間接着や顆粒エキソサイトーシス、細胞介在性細胞傷害に関係する遺伝子の発現が減少していた。重症COVID-19では、血清のTGFβレベルが感染の最初の2週間でピークに達し、これらの患者から得られた血清はTGFβ依存的にNK細胞機能を著しく阻害した。我々のデータは、時期尚早なTGFβ産生が重症COVID-19の特徴であり、NK細胞機能やウイルスの早期制御を阻害する可能性を明らかにしている。

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