生化学:アロステリックな摂動がモデル分子スイッチに及ぼす系レベルの影響
Nature 599, 7883 doi: 10.1038/s41586-021-03982-6
逆向きに働く調節因子によって制御され、複数の状態間を循環している分子スイッチタンパク質は、生物のシグナル変換に重要な役割を果たしている。スイッチタンパク質は高度に結び付いた相互作用ネットワークの中で機能するので、さまざまな過程がよくある調節因子を共有している場合、どのようにして機能の特異性が達成されるのかという根本的な疑問が生じる。今回我々は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の持つ小型のGTPアーゼスイッチタンパク質Gsp1(ヒトのRANタンパク質のホモログ)の機能的特異性が、Gsp1(RAN)スイッチサイクルの多様な速度論的性質に対して生物学的過程が示す感受性の違いに関連していることを明らかにする。我々はまず、Gsp1(RAN)中の他のタンパク質と相互作用する個々の界面を標的にして55の点変異を導入し、量的遺伝学の手法と物理的相互作用マッピングを用いて、Gsp1(RAN)の界面の摂動が細胞に幅広い影響を及ぼすことを明らかにした。予想に反して、界面の変異が細胞に及ぼす影響は、それらがGTPアーゼスイッチサイクルの速度論的パラメーターに及ぼす生物物理学的影響によって分類され、どの界面を標的にしたかによってでは決まらない。そうではなく、界面の変異はGTPアーゼサイクルの速度論的性質をアロステリックに変化させていることが分かった。これらの結果は、GTPアーゼスイッチの切り替えについて、離れた部位で起こるパートナータンパク質との結合や翻訳後修飾がアロステリック調節因子として働くというモデルを示唆している。他のGTPアーゼや他の生物学的スイッチによる調節でも、その基盤として同様な機構が働いている可能性がある。また、分子レベルの摂動の影響を定量的に決定するための今回の統合的プラットフォームは、重要な分子スイッチを標的とする疾患関連変異の作用を調べるのにも役立つかもしれない。

