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がん:膵臓の恒常性と発がんにおける腺房細胞のクローン増殖
Nature 597, 7878 doi: 10.1038/s41586-021-03916-2
膵管腺がん(PDAC)は、世界のがんによる死亡の主要な原因の1つである。ヒト組織やマウスモデルでの研究から、多くのがんについて、幹細胞が腫瘍発生を駆動する初期の変異を維持していることが示唆されている。しかし、膵臓については、細胞の再生機構とPDACのイニシエーションの原因となる機構はまだ解明されていない。今回我々は、内在性のテロメラーゼ逆転写酵素(Tert)座位から細胞系譜を追跡し、外分泌区画全体に散在するTERT陽性のまれな膵臓腺房細胞亜集団を特定した。恒常性が維持されている間、これらのTERThigh腺房細胞は、腺房細胞の増殖性クローンを形成することで膵臓を再生したが、無作為に標識された腺房細胞ではこのようなクローン形成は起きなかった。TERThigh腺房細胞で変異型Krasを特異的に発現させると、Ras–MAPKシグナル伝達の促進と、その下流のキナーゼであるERKの活性化(リン酸化ERK)により、腺房細胞のクローン形成が加速し、膵管性の前浸潤性膵上皮内腫瘍性病変への分化転換を引き起こした。切除されたヒト膵臓新生物では、リン酸化ERK陽性の腺房細胞の増殖巣が見られることが多く、活性化KRAS変異が頻繁に見られることから、これらの腺房領域は初期のがん前駆病変であると示唆される。これらのデータは、まれなTERThigh腺房細胞がKRAS変異を維持しており、これが腺房細胞の増殖を促進して、膵臓腫瘍発生のイニシエーションの場となる異常な細胞領域を形成している可能性があるというモデルを裏付けている。

