Article
分子生物学:UTXの凝縮はその腫瘍抑制作用の基盤である
Nature 597, 7878 doi: 10.1038/s41586-021-03903-7
UTX(別名KDM6A)はヒストンH3K27デメチラーゼをコードしていて、重要な腫瘍抑制因子であり、ヒトのがんでは変異していることが多い。しかし、UTXのデメチラーゼ活性は腫瘍の抑制や発生の調節を仲介するには不必要な場合が多く、UTXに内在する分子活性はまだよく分かっていない。今回我々は、UTXの相分離が、腫瘍抑制でのUTXのクロマチン調節活性の基盤となっていることを明らかにする。UTXのコアにある天然変性領域(core intrinsically disordered region;cIDR)は相分離した液体凝縮体を形成し、がんで最も頻繁に見られるUTXの変異によってcIDRが失われることが腫瘍抑制作用の喪失の主な原因であることが分かった。本質的に無秩序な領域の欠失や変異誘発、置換解析によって、腫瘍抑制と胚性幹細胞の分化にUTXの凝縮が極めて重要な役割を果たしていることが実証された。in vitroでの再構築や細胞内の改変した系で示されるように、UTXは同じ凝縮体中にヒストンメチルトランスフェラーゼMLL4(別名KMT2D)を誘引し、MLL4のH3K4メチル化活性を増強する。さらにUTXは、ゲノム全体にわたってヒストン修飾と高次クロマチン相互作用を、凝縮に依存する方式で調節する。また、Y染色体上にあるUTXホモログで、腫瘍抑制活性がUTXより弱いUTYが、分子の動きが少ない凝縮体を形成することも分かった。これらの知見によって、クロマチン調節因子が腫瘍抑制活性を発揮できるようにする上で、適切な物質状態にある液体凝縮体が極めて重要な生物学的機能を果たしていることが明らかになった。

