Article
気候科学:モントリオール議定書が陸域の炭素シンクを保護する
Nature 596, 7872 doi: 10.1038/s41586-021-03737-3
モントリオール議定書によってオゾン層破壊物質の生産が規制されたことで、成層圏のオゾン層が回復しており、オゾン層の破壊によって生じる地表の有害な紫外線の増加が回避されている。また、オゾン層破壊物質は強力な温室効果ガスであるため、モントリオール議定書には気候変動も緩和するコベネフィットがある。紫外線や気候変動の回避にはさらに、植物や、光合成によって炭素を貯蔵する植物の能力にもコベネフィットがあるが、これについてはこれまで調べられていなかった。今回我々は、オゾン層破壊、気候変動、紫外線による植物の損傷、炭素循環を結び付けるモデル化の枠組みを用いて、陸域生物圏と炭素シンクとしてのその能力に対する、紫外線の増加と気候の変化の回避のベネフィットを調べた。紫外線が植物の成長に及ぼす影響の強さがさまざまであることを考慮し、我々は、モントリオール議定書がなければ、(オゾン破壊物質を規制した場合の気候予測と比較して)今世紀末(2080~2099年)までに植物と土壌に保持される炭素が3250~6900億トン減少していた可能性があると推定する。この差によって、大気中の二酸化炭素が115〜235 ppm増加し、それに伴って全球平均地表温度がさらに0.50〜1.0°C上昇していた可能性がある。今回の知見は、モントリオール議定書が、陸域炭素シンクの減少の回避を通して、気候変動の緩和にも役立っている可能性を示唆している。

