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抗体:IgMの経鼻投与によってSARS-CoV-2変異株に対する幅広い防御効果が得られる

Nature 595, 7869 doi: 10.1038/s41586-021-03673-2

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する抗体療法では、抵抗性が大きな課題となる。今回我々は、免疫グロブリンG(IgG)による治療が直面している抵抗性を克服するために、免疫グロブリンM(IgM)中和抗体(IgM-14)を作製した。IgM-14の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する中和活性は、元のIgG-14よりも230倍以上高かった。IgM-14は、対応するIgG-14によって生じた抵抗性ウイルスと、3種類の懸念される変異株、すなわち、B.1.1.7(最初に英国で見つかったアルファ株)、P.1(最初にブラジルで見つかったガンマ株)、B.1.351(最初に南アフリカで見つかったベータ株)、さらに、他の21種類の受容体結合ドメイン変異株(その多くは緊急使用が認可されているIgG抗体に対して抵抗性を持つ)を強力に中和した。一般にIgGをIgMに改変することで抗体の有効性が高まるが、抵抗性を克服できる最も効果的なIgMを特定するには、最適なエピトープの選択が不可欠である。マウスでは、体重1 kg当たり0.044 mgのIgM-14を鼻腔内に単回投与するとSARS-CoV-2に対する予防効果が、体重1 kg当たり0.4 mgを単回投与すると治療効果が見られた。IgM-14は、P.1変異株とB.1.351変異株に対しても強力な治療効果を示したが、IgG-14ではこうした効果は見られなかった。IgM-14の齧歯類への鼻腔内投与では、薬物動態と安全性プロファイルで望ましい結果が得られた。これらの知見から、改変したIgMの鼻腔内投与は、効果を改善し、抵抗性を減らし、COVID-19の予防や治療を容易にできることが明らかになった。

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