Article
微生物学:酢酸は共生細菌に対するIgA反応性の差異を生み出す
Nature 595, 7868 doi: 10.1038/s41586-021-03727-5
細菌の腸内への定着とそれに対する封じ込めのバランスは、ヒトと細菌の共生関係に不可欠である。粘膜表面での恒常性を維持する構成要素の1つは、哺乳類で最も豊富な免疫グロブリンである免疫グロブリンA(IgA)である。いくつかの研究から、共生細菌が存在しなくても自然に産生され、多種類の細菌に反応するIgAの重要な特徴が明らかになっている。しかし、腸内環境の動的変動を考えたとき、この共生細菌反応性IgAプールが形作られる仕組みや、そのようなIgAが微生物群集にどのような影響を及ぼすかは分かっていない。今回我々は、腸内細菌の主要な代謝物の1つである酢酸が、大腸でのIgA産生を増加させるだけでなく、腸内細菌目など、特定の微生物に結合するIgAプールの特性をも変化させることを明らかにする。酢酸による共生細菌反応性IgAの誘導やIgAレパートリーの変化は、腸内細菌目に属する大腸菌(Escherichia coli)のみを定着させたマウスで観察されたが、主要な共生細菌であるBacteroides thetaiotaomicronのみを定着させたマウスでは観察されなかったことから、酢酸は特定の微生物への選択的なIgA結合をもたらすことが示唆された。その機序としては、酢酸は上皮細胞と免疫細胞の間の相互作用を調整し、微生物で刺激されたCD4 T細胞によるT細胞依存性IgA産生支持を誘導し、その結果として、大腸内におけるこれらの細菌の局在を変化させる。以上より、粘膜における恒常性を維持するために、IgA産生に差異を生み出す腸内微生物代謝物の役割が明らかになった。

