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宇宙物理学:宇宙におけるイオントラップ型原子時計の実証

Nature 595, 7865 doi: 10.1038/s41586-021-03571-7

原子の極めて安定な量子化されたエネルギー準位に振動子の周波数を固定する原子時計は、深宇宙探査や全地球航法衛星システムなどの航法用途に不可欠であるとともに、基礎物理学における問題に取り組むのに役立つツールである。そうした衛星システムは、原子時計によって決定される信号伝播時間の正確な測定結果を、伝播速度と共に使用して、位置を計算する。不安定性の小さい宇宙原子時計は、全球航法を実現する技術であるが、宇宙での動作の厳しさによって性能が制約されるため、深宇宙航法にはまだ適用されておらず、宇宙ベースの基礎物理学への応用がわずかに存在するだけである。イオンを電磁気学的に捕捉して冷却する方法によって、原子時計の性能は飛躍的に高まってきている。可視光領域で動作する地上のイオントラップ型原子時計は、それ以前のものを数桁上回る性能向上を実現しており、国の計量標準研究所の研究プログラムにおいて重要な構成要素となっているが、この新技術を宇宙に運ぶことは、依然として難題である。今回我々は、宇宙で動作中のイオントラップ型原子時計で得られた結果を示す。NASAの深宇宙原子時計(Deep Space Atomic Clock)は、地上では1.5 × 10−131/2(ここでτは平均化時間)という短期分数周波数安定度を示した。この時計は2019年に打ち上げられ、以来12か月以上にわたって宇宙で動作しており、23日間で3 × 10−15(ドリフトの除去なし)という長期安定度を示し、ドリフトは1日当たり3.0(0.7) × 10−16と見積もられた。これらはそれぞれ、現在の宇宙時計の性能を最大で1桁上回っている。この深宇宙原子時計は、輻射、温度、磁場の変動に対して感受性が低いため、宇宙環境に特に適している。このレベルの性能の宇宙時計は、信号遅延時間をin situで測定する一方向航法を可能にし、深宇宙探査機のほぼリアルタイムでの航法を実現に導くだろう。

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