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コロナウイルス:COVID-19組織アトラスから明らかになったSARS-CoV-2病理と細胞標的

Nature 595, 7865 doi: 10.1038/s41586-021-03570-8

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)を原因とし、急性呼吸促迫症候群と多臓器不全を引き起こすことがあるが、その病態生理についてはほとんど分かっていない。今回我々は、COVID-19で死亡したドナーから採取した24個の肺、16個の腎臓、16個の肝臓、19個の心臓の剖検組織試料の単一細胞アトラスと、14個の肺試料の空間的アトラスを生成した。統合的な計算解析から、肺の上皮、免疫区画、間質区画で大幅なリモデリングが起きていることが明らかになるとともに、II型肺胞上皮細胞の分化異常や、繊維芽細胞と推定のTP63+ IPBLP(intrapulmonary basal-like progenitor)細胞の増殖など、組織再生不全の複数の経路の証拠が得られた。ウイルスRNAは単核貪食細胞と肺上皮細胞で多く見られ、そこで特定の宿主プログラムを誘導していた。肺の空間解析により、ウイルスRNAが存在する肺領域と存在しない肺領域での炎症性の宿主応答が識別された。他の組織アトラスの解析では、COVID-19ドナーの心臓組織における複数の細胞タイプでの転写変化が明らかになり、COVID-19のゲノム規模関連解析に基づいて、疾患重症度と関係する細胞タイプと遺伝子がマッピングされた。我々の基礎的なデータセットは、重症のSARS-CoV-2感染の全身での生物学的影響を明らかにしており、これは新たな治療法へ向けた重要な一歩となる。

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