がん:肝星細胞はNK細胞が持続させる乳がん休眠を抑制する
Nature 594, 7864 doi: 10.1038/s41586-021-03614-z
原発性腫瘍切除後に、検出不能な播種性腫瘍細胞(DTC)が存続することは、効果的ながん治療を行う上で大きな課題となっている。これらの永続的な休眠DTCは将来的な転移の種であり、それらを休眠から増殖へと切り替える機構の解明が求められている。がんの休眠は転移性疾患を防ぐための唯一の治療可能時間域となるため、休眠DTCリザーバーの分布、組成、動態を包括的に理解することが不可欠である。今回我々は、さまざまな組織特異的微小環境が、乳がんの肝臓(転移好発部位であり、肝転移は予後不良に関連することが多い)への進行を抑制あるいは許容することを示す。マウスモデルを用いたところ、休眠環境ではナチュラルキラー(NK)細胞の選択的な増加が見られることが分かった。インターロイキン15を用いた補助(アジュバント)免疫療法によって、インターフェロンγシグナル伝達を介して休眠を維持するNK細胞の豊富なプールが確保され、これによって肝転移が防止され、生存が延長した。休眠からの脱出前には、NK細胞区画の顕著な縮小と同時に、活性化された肝星細胞(aHSC)の蓄積が起こった。肝臓の共培養に関するプロテオミクス研究から、aHSCが分泌するケモカインCXCL12が、そのコグネイト受容体CXCR4を介して、NK細胞の静止状態の誘導に関与していることが示唆された。CXCL12の発現とaHSCの存在量は、肝転移の見られる患者で密接に相関していた。我々のデータは、NK細胞とaHSCの間の相互作用が、がん休眠のマスタースイッチであることを明らかにするもので、NK細胞プールの正常化を目的とした治療法が、転移性増殖を防止できる可能性があることを示唆している。

