コロナウイルス:パンデミックコロナウイルスや出現前のコロナウイルスに対する中和抗体誘導ワクチン
Nature 594, 7864 doi: 10.1038/s41586-021-03594-0
ベータコロナウイルス類は、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)のアウトブレイク(集団発生)に加え、現在のSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)のパンデミック(世界的大流行)を引き起こした。SARS-CoV-2や動物間で循環するベータコロナウイルス類に対して防御免疫を誘導するワクチンは、今後のパンデミックを防ぐ可能性がある。今回我々は、SARS-CoV-2の受容体結合ドメインを抱合させたナノ粒子に、3M-052とミョウバンのアジュバントを添加して、マカク属のサルに免疫感作を行うと、複数のコウモリコロナウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2(B.1.1.7、P.1、B.1.351の変異株を含む)に対する交差中和抗体応答が誘導されることを示す。マカク属サルに対してこれらのナノ粒子によるワクチン接種を行ったところ、血清のSARS-CoV-2に対する50%阻害希釈(ID50)中和力価(幾何平均)は4万7216となり、上気道と下気道でSARS-CoV-2に対する防御も認められた。安定化した膜貫通スパイクあるいは単量体の受容体結合ドメインをコードするヌクレオシド修飾mRNAも、これらのナノ粒子で得られるよりも力価は低いものの、SARS-CoVおよび複数のコウモリコロナウイルス類に対して交差中和抗体応答を誘導した。これらの結果は、現在使われているmRNAベースのワクチンが、人獣共通ベータコロナウイルス類の今後のアウトブレイクをある程度防ぐ可能性があることを実証するとともに、多数(あるいは全て)のベータコロナウイルス類に対する今後のワクチン開発のための多量体タンパク質プラットフォームを提供している。