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構造生物学:哺乳類RNAポリメラーゼIIの転写開始前複合体の構造
Nature 594, 7861 doi: 10.1038/s41586-021-03554-8
転写開始は、哺乳類細胞の分化と発生の間に遺伝子活性の調節が行われる主要な段階である。RNAポリメラーゼII(Pol II)は、転写を開始するために基本転写因子群と集合して転写開始前複合体(PIC)を作り、これがプロモーターDNAを開く。これまでの研究で、酵母とヒトのPICの分子構造が明らかになり、基本転写因子TFIIHによってDNAが開く際のトポロジカルモデルが提示されている。今回我々は、ヒトの基本転写因子とブタ(Sus scrofa domesticus)のPol II(ヒトPol IIと99.9%同一)からなるPICの高分解能クライオ電子顕微鏡構造を明らかにする。我々は、閉じた状態と開いた状態のプロモーターDNAと結合したこのPICの構造を2.5~2.8 Åの分解能で決定し、TFIIHの構造を2.9~4.0 Åの分解能で解明した。さらにTFIIHのトランスロカーゼXPBを転座の前と後の状態で捉えて、XPBがDNAのねじれを引き起こし、それを周囲へと広げると、TATAボックス下流の約30塩基対のDNAが開き始めることを明らかにした。我々はまた、DNAの開裂は2段階で起こり、これがTFIIHがPICコアから離れるのにつながることを示す証拠を得た。TFIIHがPICコアから離れるとDNAのねじれが進まなくなり、RNA鎖の合成が開始できるらしい。

