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コロナウイルス:クロファジミンはSARS-CoV-2を含むコロナウイルスを広く抑制する

Nature 593, 7859 doi: 10.1038/s41586-021-03431-4

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)と2012年の中東呼吸器症候群(MERS)の出現に次いで、コロナウイルスによって引き起こされた人獣共通感染症の今世紀3度目のアウトブレイク(集団発生)である。コロナウイルスに対する治療選択肢は限られている。今回我々は、良好な安全性のプロファイルを持つ抗ハンセン病薬であるクロファジミンが、複数のコロナウイルスに対する阻害活性を有しており、さまざまなin vitro系で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)とMERS-CoVの複製に拮抗できることを示す。我々は、米国食品医薬品局(FDA)によって承認済みのこの分子が、ウイルスのスパイク糖タンパク質によって仲介される細胞融合と、ウイルスのヘリカーゼの活性を阻害することを見いだした。SARS-CoV-2病原性のハムスターモデルにおいてクロファジミンを予防的あるいは治療的に投与すると、肺のウイルス量や糞便中のウイルス排出量が減少し、ウイルス感染に伴う炎症も緩和された。クロファジミンとレムデシビルの併用は、in vitroとin vivoで相乗的な抗ウイルス効果を示し、上気道からのウイルス排出を抑制した。クロファジミンは経口投与が可能で比較的安価に製造できるため、COVID-19の外来患者の治療や、レムデシビルと併用する場合はCOVID-19の入院患者の治療において、特に費用が重要な要素である状況や専門の医療施設が限られた状況では魅力的な臨床候補薬である。我々のデータは、クロファジミンが、COVID-19の現在のパンデミックの制御や、おそらくもっと重要なことに、今後出現する可能性のあるコロナウイルス感染症の対応に役に立ち得ることを示す証拠を提示している。

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