分子生物学:テロメアDNAが結合したヒトテロメラーゼホロ酵素の構造
Nature 593, 7859 doi: 10.1038/s41586-021-03415-4
テロメラーゼは、染色体末端にテロメア反復配列を付加して、ゲノム末端の不完全な複製により引き起こされるテロメア消失を補償している。ヒトでは、テロメラーゼの発現は胚発生の際とがんで増加し、テロメラーゼの機能を低下させる変異は病気につながる。以前に報告されたヒトテロメラーゼの8 Å分解能の構造によって、脊椎動物特異的な構成と構造が明らかになり、これには、テロメラーゼRNAにより1つのH and ACA(以降はH/ACA)box型リボ核タンパク質(RNP)の突出部に柔軟につながれた触媒中心を含むことが示された。がんなどの病気に対する治療手段としてテロメラーゼ活性を効果的に調整できる処置を開発するには、高分解能構造情報が必要である。今回我々はクライオ電子顕微鏡法を用いて、テロメアDNAに結合したヒトテロメラーゼホロ酵素の構造を4 Åより高い分解能で決定した。得られた構造によって、テロメラーゼの活性部位中の重要なDNA結合界面とRNA結合界面に加えて、テロメラーゼの活性を変える変異の位置が明らかになった。また、ホロ酵素中のヒストンH2A–H2B二量体が重要なテロメラーゼRNAモチーフに結合していることが突き止められた。これは、テロメラーゼRNAの折りたたみと機能におけるヒストンの役割を示唆している。さらに、真核生物H/ACA RNPのこの構造からは、保存されたRNAとタンパク質モチーフの分子認識と、病気を引き起こす多数の変異の分子病理学的性質を理解するのに重要な相互作用が明らかになった。今回の知見は、ヒトテロメラーゼの組み立てと活性部位の構造学的詳細を提供しており、この酵素を標的とする治療薬開発への道を開くのを助けるだろう。

