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神経科学:書字を介した脳活動の文章への変換による高性能コミュニケーション
Nature 593, 7858 doi: 10.1038/s41586-021-03506-2
脳–コンピューターインターフェース(BCI)は、運動や発話の能力を失った人々でコミュニケーションを回復させることができる。これまで、BCI研究では主に、到達運動や把握運動、コンピューターのカーソルを使ったポイント・アンド・クリックによる文字入力など、粗大運動技能の回復に重点が置かれてきた。しかし、書字やタッチタイピングといった巧緻性の高い行動を素早く連続して行うことができれば、より速いコミュニケーションが可能になると考えられる。今回我々は、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)を用いて、リアルタイムで運動野の神経活動から書字動作の企図を解読してそれを文章に翻訳する皮質内BCIを開発した。脊髄損傷により手が麻痺している研究参加者は、このBCIを用いて毎分90文字という文字入力速度を達成し、その際のオンラインでの未修正精度は94.1%、オフラインで汎用自動修正を適用した場合の精度は99%以上だった。我々の知る限り、この文字入力速度は他のいかなるBCIについて報告されているものよりも速く、この参加者の年齢層の人々のスマートフォンの典型的な文字入力速度(毎分115文字)と同等である。加えて、理論考察により、書字のような時間的に複雑な動作の解読が、2点間到達運動よりも基本的に容易である可能性があることの理由が説明された。今回の結果は、BCIの新たなアプローチを切り開くとともに、麻痺から数年経過した後でも高速で巧緻な動作の正確な解読が実現可能であることを例証するものである。

