遺伝学:ゲノム規模のエンハンサーマップによってリスクバリアントを疾患遺伝子に結び付ける
Nature 593, 7858 doi: 10.1038/s41586-021-03446-x
ゲノム規模関連解析(GWAS)によって、ヒトの疾患や複雑な形質に関連する非コード座位がこれまでに数千も特定されており、これらの座位それぞれが疾患の機構についての手掛かりを明らかにする可能性がある。基盤となる原因バリアントの多くはエンハンサーに影響を及ぼす可能性があるが、そうしたバリアントを解釈するための、エンハンサーとそれらの標的遺伝子についての正確な地図は存在しない。我々は最近、どのエンハンサーがどの遺伝子を調節するかを予測するためのABC(activity-by-contact)モデルを開発し、いくつかの細胞タイプでCRISPRによる摂動を用い、その検証を行った。今回我々は、ヒトの131の細胞タイプや組織でこのABCモデルを適用してエンハンサー–遺伝子マップを作製し、これらのマップを用いてGWASバリアントの機能を解釈した。その結果、ABCによって、72の疾患や複雑な形質について5036のGWASシグナルが2249の特異な遺伝子に結び付けられた。この中には、さまざまなタイプの細胞で作用するエンハンサーのバリアントを介して多数の表現型に影響を及ぼすと見られる、577の遺伝子からなる1つのクラスが含まれる。炎症性腸疾患(IBD)では、樹状細胞などの特定の細胞タイプにおいて、予測されるエンハンサーに原因バリアントが20倍以上多く存在しており、ABCは非コードバリアントと標的遺伝子の結び付けにおいて、他の調節方法よりも高い精度を実現した。バリアントを機能と結び付けるこれらの地図によって、IBDのリスクバリアントを含み、マクロファージにおいてPPIFの発現を調節してミトコンドリアの膜電位を変化させる1つのエンハンサーが明らかになった。我々の研究によって、ゲノム調節の原理が明らかになり、IBDに影響を及ぼす遺伝子群が特定され、一般的な疾患のリスクバリアントを分子機能や細胞機能に結び付ける情報資源と一般化可能な戦略が示された。

