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がん:腫瘍微小環境で細胞にプログラムされた栄養素分配

Nature 593, 7858 doi: 10.1038/s41586-021-03442-1

がん細胞は、ワールブルク効果による代謝を介する特徴的なグルコース消費を行っており、この過程は、陽電子放射断層撮影法(PET)による腫瘍画像化の基盤となっている。腫瘍に浸潤する免疫細胞も同じくグルコースに依存しており、腫瘍微小環境(TME)での免疫細胞の代謝減弱は、腫瘍細胞の免疫回避の一因となっている。しかし、TMEでの免疫細胞の代謝調節異常が細胞内在性のプログラムによるものなのか、それとも限られた栄養素に対するがん細胞との競合によるものなのかは不明である。今回我々はPETトレーサーを用いて、TME中の特定の細胞サブセットによるグルコースとグルタミンの入手しやすさと取り込みを測定した。さまざまながんモデルにわたって、腫瘍内グルコースの取り込み能力は骨髄系細胞が最も高く、T細胞とがん細胞がそれに続いた。対照的に、がん細胞はグルタミンの取り込み能が最も高かった。栄養素による分配のこうした違いは、mTORC1シグナル伝達に加えてグルコースとグルタミンの代謝に関連する遺伝子の発現を介して、細胞内在性の様式でプログラムされていた。グルタミンの取り込みを阻害すると、腫瘍内に存在する細胞タイプの全てにわたってグルコース取り込みが増強されたことから、グルタミン代謝がグルコース取り込みを抑制しており、グルコースはTMEでの律速因子ではないことが明らかになった。従って、細胞内在性のプログラムは、免疫細胞とがん細胞のそれぞれで、グルコースとグルタミンの優先的獲得を促進している。これらの栄養素の細胞選択的な分配は、TME内の特定の細胞集団の代謝プログラムと代謝活性の増強や監視を行うための治療法や画像化戦略の開発に利用できるかもしれない。

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