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コロナウイルス:SARS-CoV-2 501Y.V2の回復期血漿による中和の回避

Nature 593, 7857 doi: 10.1038/s41586-021-03471-w

重症急性呼吸器症候群ウイルス2(SARS-CoV-2)の懸念される変異株(VOC)が複数の場所で無関係に生じており、これらはSARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質を標的とする現在使われているワクチンの有効性を低下させる可能性がある。今回我々は、生ウイルス中和アッセイを行い、南アフリカでの感染第一波と第二波の際に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した成人から採取した血漿を用いて、非VOC変異株と501Y.V2 VOC(別名B.1.351)の中和を比較した(感染の第二波では501Y.V2変異株による感染が優勢だった)。塩基配列解読からは、第一波の血漿ドナーは、受容体結合ドメイン中にE484K置換を持つ1つの感染例を除いて、501Y.V2関連変異が含まれないウイルスに感染したことが明らかになった。501Y.V2ウイルス変異株は第二波の感染者の血漿で効果的に中和され、第一波のウイルス変異株は第一波の感染者の血漿で効果的に中和された。しかし、501Y.V2変異株は第一波の感染者の血漿ではほとんど交差中和されず、その効果は、第二波の感染者の血漿による501Y.V2の中和と比較して、15.1分の1に低下した。対照的に、第一波のウイルス変異株の第二波の感染者の血漿による交差中和はより効果的で、第一波の感染者の血漿による第一波ウイルス変異株の中和と比べて、2.3分の1しか低下しなかった。E484K置換のみのSARS-CoV-2変異株への感染者からの血漿は1検体しか調べていないが、この血漿検体はどちらの変異株も強力に中和した。第一波ウイルスが501Y.V2感染者の血漿によって効果的に中和されたという観察結果は、VOC塩基配列に基づくワクチンが、流行中の他のSARS-CoV-2系統に対して活性を保持している可能性を示す予備的証拠である。

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