Review

心血管疾患:アテローム性動脈硬化症の変化しつつある全体像

Nature 592, 7855 doi: 10.1038/s41586-021-03392-8

アテローム性動脈硬化症に関する概念は、新たに明らかになった証拠をきっかけにかなり大きく進化しており、これまでの考えの多くに疑問が生じている。本論文では、この証拠を再検討し、それがアテローム性動脈硬化症の理解にどのような影響を及ぼすかを論じる。アテローム性動脈硬化症の発症リスクはもはや、西欧諸国で特に高いということはなくなり、世界中で多くの死亡に関係している。アテローム性動脈硬化症は現在、若年層にも影響を及ぼしており、またこれまでの症例と比較すると、女性が増え、患者の民族的背景にも大きな広がりが見られるようになっている。リスク因子についても、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール、血圧、喫煙の位置付けが下がるなど状況は変化しており、最近の研究では高密度リポタンパク質の防御効果に疑問が投げ掛けられている。現在、アテローム性動脈硬化症の原因として、LDLに加えて、トリグリセリドを多く含むリポタンパク質が注目を集めており、また、睡眠障害、運動不足、マイクロバイオーム、大気汚染、環境ストレスのような、非従来的な動脈硬化促進因子にも関心が持たれている。炎症経路と白血球が、従来からのリスク因子と新たに見つかったリスク因子を同様に、動脈壁細胞の挙動変化に結び付けている。アテローム性動脈硬化症の病因を詳しく調べることによって、骨髄の果たす役割が明らかになってきた。幹細胞での体細胞変異はクローン性造血を引き起こすことがあり、これまで知られていなかったが、クローン性造血は加齢に関連して広く見られる強力な因子として、心臓血管病発症リスクに関わっている。アテローム性動脈硬化症の血栓性合併症の原因となる機構の特性解析は、「脆弱性プラーク」の概念をはるかに超えて進んでいる。アテローム性動脈硬化症の生物学的な理解がこのように進んだことで新たな治療介入の道が開かれつつあり、現在至る所で見られるようになったアテローム性動脈硬化性疾患の予防や治療の改善が期待できる。

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