気候科学:メタンの社会的コストには、気候の不確実性よりも公平性が重要である
Nature 592, 7855 doi: 10.1038/s41586-021-03386-6
メタンの社会的コスト(SC-CH4)は、1トンのメタンの大気中への排出によって生じる福祉の経済的損失の見積もりである。この見積もりはまた、費用便益分析や気候政策への情報の提供に使用できる可能性がある。しかし、現在のSC-CH4の見積もりには、重要な科学的知見や観測に基づく制約が含まれていない。今回我々は、最近行われたメタンの放射強制力の計算への25%の上方修正を取り入れ、較正された縮小形式の全球気候モデルおよび統合評価モデル(IAM)のアンサンブルを組み合わせることで、SC-CH4を見積もった。SC-CH4の今回のマルチモデル平均推定値は、高排出シナリオ[代表的濃度経路(RCP)8.5]の下では、CH4 1トン当たり933ドル(5〜95%の範囲;CH4 1トン当たり471〜1570ドル)であり、この値は、米国連邦政府が用いている気候の不確実性の枠組みに基づく推定値と比べて22%少なかった。また、95パーセンタイルの推定値は、米国の枠組みで得られた対応する値より51%低かった。一方、低排出シナリオ(RCP 2.6)の下では、マルチモデルの平均値はCH4 1トン当たり710ドルまで低下した。これらの推定値が低くなったのは、平衡気候感度の推定値が絞り込まれたことと、気候モデルの不確実なパラメーター間のこれまで無視されてきた関係の影響とが組み合わさったためである。さらに我々は、SC-CH4推定値がモデルの組み合わせに敏感であることも示す。例えば、1つのIAM内でも、メタンサイクルのさまざまなサブモデルによって、SC-CH4の推定値に約20%のばらつきが生じる。しかし、IAMを替えると、SC-CH4の推定値が2倍以上になることがある。今回の結果を、公平性に関する社会的関心を考慮して拡張すると、低所得地域と高所得地域のSC-CH4推定値に1桁以上の差が生じた。公平性で重み付けした米国の中央推定値は、CH4 1トン当たり8290ドルに増加したのに対し、サハラ以南のアフリカの推定値は、CH4 1トン当たり134ドルにまで減少した。

