Review
環境科学:変動する気候における転換点のしきい値のオーバーシュート
Nature 592, 7855 doi: 10.1038/s41586-021-03263-2
古気候の記録は、気候システムには転換点があり、そうした転換点では、強制力の小さな変化によって転換要素と呼ばれる地球システムの構成要素に大きな不可逆的変化が生じることを示唆している。化石燃料の燃焼の結果として大気中の温室効果ガス濃度が上昇し続けているため、人間活動も転換の引き金となる可能性があり、その影響に適応するのは難しいと思われる。これまでの研究では、氷床融解などの重要な転換要素については、地球温暖化のしきい値が産業革命以前の状態よりも低いことが報告されている。だとすれば、現代の高い温暖化速度は、こうしたしきい値を超えるのはほぼ不可避であることを示唆しており、これは、人類がこうした転換事象から逃れられないことを意味すると広く考えられている。今回我々は、特に、急速に変動する気候において緩やかに進行する転換要素(大西洋の南北方向の鉛直循環の崩壊など)では、この仮定に欠陥がある可能性があることを示す。最近開発された理論では、オーバーシュート時間が転換要素の有効な時間スケールに比べて短かければ、システムの状態に変化を生じさせずに、一時的にしきい値を超えられることが示されている。我々は、このことを実証するために、ピークに達した後回復して、産業革命以前のレベルよりも1.5°C高い地球温暖化レベルで安定化するという地球温暖化の軌跡によって駆動される、規定のしきい値を持つ、転換要素の分かりやすい単純なモデルを検討した。今回の結果は、転換点のしきい値のオーバーシュートに伴うリスクを評価する際に時間スケールを考慮に入れることの重要性を浮き彫りにしている。

