進化学:霊長類の細胞融合により神経発生における遺伝子調節の相違を解き明かす
Nature 592, 7854 doi: 10.1038/s41586-021-03343-3
霊長類の中で、ヒトは独特な発生経路を示し、これがヒトという種に特異的な多くの形質の原因となっている。しかし、霊長類であるヒトとチンパンジーの初代組織を利用することができないため、ヒトの進化を研究する能力は限られている。霊長類由来の誘導多能性幹細胞を用いたin vitroでの比較手法により、細胞レベルや分子レベルで、種間の違いが明らかにされ始めている。特に、脳オルガノイドは、霊長類の神経発生をin vitroで研究するための有望なプラットフォームとして有望視されているが、オルガノイドの種間の比較は、発生のタイミングや分化におけるばらつきに違いがあるために複雑である。今回我々は、これらの制約に対応するために、ヒトとチンパンジーの誘導多能性幹細胞を融合させて、4倍体ハイブリッド幹細胞のパネルを作製することによって、新たなプラットフォームを開発した。我々はこの方法を用いて、これらのハイブリッド幹細胞を神経オルガノイドに分化させ、大脳皮質発生における種間の違いについて調べた。その結果、ハイブリッドオルガノイドは、異なる細胞タイプと発生段階にわたってシス作用性とトランス作用性の遺伝子発現の違いを解き明かすための制御系となることが分かり、アストロサイト関連遺伝子に対する選択シグネチャーが明らかになった。我々はさらに、ニューロンのカルシウムシグナル伝達を調節し、神経精神障害と関連付けられている、ヒトセマトスタチン受容体2遺伝子(SSTR2)の発現が上昇していることを見いだした。我々は、皮質ニューロンにおいてSSTR機能調節に対するヒト特異的な応答を明らかにしており、これは、このプラットフォームがヒト進化の分子基盤の解明に役立つ可能性を明確に示している。

