考古学:10万5000年前のホモ・サピエンスの、より湿潤だったカラハリ盆地における革新的な行動
Nature 592, 7853 doi: 10.1038/s41586-021-03419-0
アフリカの考古学的記録からは、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)を特徴付ける、複雑な象徴的行動や技術的行動の出現を示す最初期の証拠が得られている。後期更新世の考古学的遺跡の多くは海岸部に位置しており、そうした遺跡からは大量の貝殻遺物が発見されていることから、アフリカ南部の現生人類の起源は本質的に海岸部および海洋の資源と結び付いており、内陸部での行動的革新はそれに後れを取っていたとする説が有力になった。しかし、アフリカ南部の内陸部には保存状態が良好で編年が確かな後期更新世の層状遺跡が極めて少なく、そのため、この海岸仮説はいまだ検証されていない。今回我々は、アフリカ南部の海岸部で約10万5000年前に存在したとされる初期人類の革新に似たものが、600 km以上内陸に居住していた集団にもほぼ同時期に存在していたことを示す。カラハリ盆地南部の岩窟住居の層状堆積物の発掘において、非実用的な物体(方解石の結晶)およびダチョウの卵殻の意図的な収集を示す証拠が得られ、これらの年代は光刺激ルミネッセンス法によって約10万5000年前と推定された。残存するトゥファ堆積物のウラン・トリウム年代測定の結果、この地では散発的に大量の淡水が流れていた時期があったことが示され、そうした事象の最古のものは年代が11万~10万年前と推定された。この年代は、考古学的堆積物のものと同一である。これらの成果は、アフリカ南部の内陸部における人類の行動的革新が、海岸付近の集団のものに後れを取ってはいなかったこと、そしてこれらの革新が湿潤なサバンナ環境において発達した可能性があることを示唆している。従って、ホモ・サピエンスの行動的革新の出現を海岸資源の利用と結び付けるモデルには、見直しが必要と考えられる。

