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幹細胞:細胞競合は異種間キメラ形成に対する障壁となる
Nature 592, 7853 doi: 10.1038/s41586-021-03273-0
細胞競合は保存された適応度感知機構に関わっており、より適応度の高い細胞が、生存可能だが適応度の低い近隣細胞を排除する。細胞競合は正常な発生と組織の恒常性維持を保証する監視機構だと考えられており、また異種間キメラ形成に対する障壁として働くことが示唆されている。しかし、in vitroモデルがないために、初期発生中の異種間キメラ形成の状況における細胞競合については調べられていない。今回我々は、多能性幹細胞(PSC)の異種間共培養戦略を開発し、異種間での細胞競合について、これまで知られていなかった様式を見いだした。PSC間の異種間競合は、プライム型の多能性細胞では起こるがナイーブ型では起こらず、また進化的に離れた生物種間で起こる。比較トランスクリプトーム解析によって、適応度の低いヒト「敗者」細胞では、特にNF-κBシグナル伝達経路に関係する遺伝子の発現が上昇していることが分かった。ヒト細胞でNF-κB複合体の中核構成成分であるP65(別名RELA)と上流の調節因子(MYD88)を遺伝的に不活性化すると、ヒトPSCとマウスPSCの間での競合を克服でき、その結果としてマウス初期胚でのヒト細胞の生存とキメラ形成が改善された。細胞競合に関するこれらの知見によって、哺乳類の初期発生に見られる細胞の競合的相互作用の基盤となる、進化的に保存された機構の研究に道が開けるだろう。異種間のPSC競合を抑制すれば、動物でのヒト組織の作製が容易に行えるようになるかもしれない。

