Article

コロナウイルス:D614Gスパイク変異はSARS-CoV-2の適応度を変化させる

Nature 592, 7852 doi: 10.1038/s41586-020-2895-3

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質のD614G置換は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)において優勢となっている。しかし、この変異株がウイルス拡散やワクチンの有効性に及ぼす影響については、まだ明らかになっていない。今回我々は、USA-WA1/2020 SARS-CoV-2株にスパイクタンパク質のD614G置換を導入し、この置換はウイルス粒子の感染性や安定性を増加させることで、ヒト肺上皮細胞や初代ヒト気道組織でのウイルス複製を増強することを見いだした。D614Gスパイクタンパク質を発現するSARS-CoV-2(G614ウイルス)を感染させたハムスターでは、鼻腔洗浄液や気管での感染力価が上昇していたが、肺ではこの上昇は見られなかった。これは、この変異がCOVID-19患者の上気道でウイルス量を増加させ、伝播を増加させる可能性があるという臨床的証拠を裏付けている。D614ウイルスを感染させたハムスターの血清は、D614ウイルスよりもG614ウイルスに対してやや高い中和抗体価を示しており、これは、D614G変異が臨床試験中のワクチンのCOVID-19に対する防御能を低下させる可能性は低く、治療抗体を、流行中のG614ウイルスに対して検証すべきであることを示唆している。臨床的な知見と合わせて、我々の研究は、ウイルス拡散におけるこの変異株の重要性や、ワクチン効果や抗体治療に関するその意義を明らかにしている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度