天体素粒子物理学:IceCube実験によって検出されたグラショウ共鳴のエネルギーを持つ粒子シャワー
Nature 591, 7849 doi: 10.1038/s41586-021-03256-1
グラショウ共鳴は、電子と高エネルギー反電子ニュートリノが相互作用する際の、W−ボソンの共鳴状態の形成を表している。そのピークエネルギーは、電子の静止系での反電子ニュートリノエネルギーが6.3ペタ電子ボルト(PeV)の所にある。このエネルギースケールは非常に大きく、現在稼働中および計画中の粒子加速器では到達できない。しかし、自然界の天体物理学的現象では、ペタ電子ボルトのスケールを上回るエネルギーの反ニュートリノが生成されていると予想されている。今回我々は、IceCubeニュートリノ観測装置によって、グラショウ共鳴のエネルギーを持つとして矛盾しない高エネルギー粒子のカスケード(粒子シャワー)を検出したことを報告する。シャワーのエネルギーは、6.05 ± 0.72 PeV(南極氷床におけるチェレンコフ放射から決定)と測定された。この粒子シャワーの中には、二次ミューオン生成と矛盾のない特徴が観測され、これによって共鳴W−ボソンのハドロン崩壊であることが示唆された。この特徴から、生成源が天体物理学的なものであることが確認されるとともに、その方向の再構築精度が向上した。グラショウ共鳴を示すこの証拠は、宇宙ニュートリノフラックスの中に反電子ニュートリノが存在することを示唆するとともに、素粒子物理学の標準模型のさらなる妥当性を確認するものでもある。この特徴的な信号の同定は、反ニュートリノとニュートリノを見分ける方法を示している。つまり、ハドロン核子相互作用によってニュートリノが生成されたのか、光ハドロンの相互作用を通してニュートリノが生成されたのか、天文学的な加速器に強力な磁場が伴っているのか、いないのかを特定する方法が得られる。このように、フレーバー(電子ニュートリノ、ミューオンニュートリノまたはタウニュートリノ)と電荷(ニュートリノまたは反ニュートリノ)の両方から得られる知見によって、今後のニュートリノ天文学の進展が促されると期待される。

