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構造生物学:グルタミン酸輸送体は2つの疎水性ゲートがある塩素イオンチャネルを持つ
Nature 591, 7849 doi: 10.1038/s41586-021-03240-9
グルタミン酸は、中枢神経系に最も豊富に存在する興奮性神経伝達物質で、その精密な制御は正常な脳機能の維持と興奮毒性の防止に不可欠である。細胞外のグルタミン酸の除去は、細胞膜に結合している輸送体が行っている。この輸送体は、グルタミン酸輸送をナトリウムやカリウム、pH勾配と、エレベーター機構を用いて共役させている。グルタミン酸輸送体はまた、輸送とは熱力学的に共役していないチャネル様の過程によって塩素イオンを透過させる。しかし、このような二元的な機能を持つ輸送体が2つの一見矛盾する役割を果たすのを可能とする分子機構は知られていない。今回我々は、チャネルが開いた状態のグルタミン酸輸送体ホモログのクライオ電子顕微鏡構造を報告する。この構造によって、グルタミン酸輸送サイクルの間に形成される水性の空洞が明らかになった。この空洞の機能特性と分子動力学シミュレーションの結果を組み合わせると、この空洞は水が出入り可能な塩素イオン透過経路であり、2つの疎水領域によりゲート開閉が行われていて、哺乳類とアーキアのグルタミン酸輸送体で広く保存されていることが分かった。我々の知見により、グルタミン酸輸送体がその2つの機能を支える機構への手掛かりがもたらされ、溶質運搬体1A輸送体ファミリーにより共有されている完全な輸送サイクルのマッピングに有用と思われる情報が付け加えられた。

