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古代DNA:100万年前のDNAが解き明かすマンモス類のゲノム史
Nature 591, 7849 doi: 10.1038/s41586-021-03224-9
経時的なゲノムデータは、種分化などの進化過程の研究において多大な可能性を秘めている。しかし、種分化の事象全体にわたって試料を集めるには、多くの場合、前期更新世まで十分に時代をさかのぼるゲノム時系列が必要になると考えられる。理論モデルは、DNAはこの時間スケールを経ても残存するはずだと示唆しているが、これまでに回収された最古のゲノムデータは78万~56万年前のウマの標本から得られたものである。本論文では、前期および中期更新世の3点のマンモス標本からゲノム規模のデータを回収したことを報告する。これらの標本のうち2点は、年代が100万年以上前までさかのぼる。解析の結果、前期更新世のシベリア東部には、2つの異なるマンモス系統が存在したことが明らかになった。1つは、後にケナガマンモス(Mammuthus primigenius)を生み出した系統で、もう1つは、北米に定着した最初のマンモス類の祖先に当たる、これまで知られていなかった系統である。また、北米のコロンビアマンモス(M. columbi)の祖先が、これら2系統間の中期更新世における交雑によって生じたことが示され、この遺伝的混合における各系統の寄与の割合はほぼ同等であったと考えられた。さらに、ケナガマンモスの低温適応に関連するタンパク質コードの変化の大部分が、100万年前にすでに生じていたことが明らかになった。これらの知見は、種分化および長期的な適応進化に関する我々の理解を深める上で、地質学的年代の古代ゲノミクスが持つ潜在的可能性を浮き彫りにしている。

