分子生物学:METTL3はマウス胚性幹細胞でヘテロクロマチンを調節する
Nature 591, 7849 doi: 10.1038/s41586-021-03210-1
METTL3(methyltransferase-like 3)は、mRNAのN6-メチルアデノシン(m6A)のメチル化を行い、これがmRNAの安定性とタンパク質への翻訳に影響を及ぼす。METTL3はクロマチンにも結合するが、METTL3とm6Aのメチル化がクロマチンでどのような役割を果たすのかは、完全に解明されていない。今回我々は、METTL3がマウス胚性幹細胞のヘテロクロマチンを調節しており、ヘテロクロマチンの完全性はレトロウイルスエレメントの抑制と哺乳類の発生に極めて重要であることを明らかにする。METTL3は、大部分が内在性レトロウイルスのIAP(intracisternal A particle)型ファミリーに局在する。Mettl3をノックアウトすると、複数のヘテロクロマチン標識をMETTL3を標的とするIAPへうまく置けなくなり、IAPの転写が亢進することから、METTL3はIAPヘテロクロマチンの完全性に重要であると考えられる。さらに、METTL3が結合したIAP由来のRNA転写産物はクロマチンに結合しており、m6Aがメチル化されていることを示す証拠が得られた。このようなm6Aが標識された転写産物には、m6Aリーダータンパク質YTHDC1が結合しており、YTHDC1がMETTL3と相互作用して、METTL3とクロマチンとの結合を促進する。METTL3はヒストン3リシン9(H3K9)トリメチルトランスフェラーゼであるSETDB1やその補因子であるTRIM28とも物理的に結合するので、これらがIAPに局在するのに重要である。これらの知見は、METTL3が触媒するRNAのm6A修飾が、マウス胚性幹細胞でのIAPヘテロクロマチンの完全性に重要であることを明確に示しており、哺乳類のヘテロクロマチンを制御する機構の1つがこれによって明らかになった。

