Article
分子生物学:切断によって誘導される複製の追跡から明らかになった障害部位での複製停止
Nature 590, 7847 doi: 10.1038/s41586-020-03172-w
切断によって誘導される複製(BIR)は、複製フォークの崩壊やテロメア侵食によって形成されるものと類似したDNA二本鎖切断箇所の一端を修復し、がんなどのヒト疾患でのゲノム不安定性の開始に関与することが知られている。BIRに必要な酵素はこれまでの研究で明らかにされてきたが、BIR合成の開始と伸長や、移動するDループが既知の複製障害物を通り抜ける仕組みは、技術的な限界に妨げられて分かっていない。今回我々は、新たに開発した分析法を用いて、BIR合成は鎖の侵入の直後に開始され、S期の複製よりもゆっくりと進行することを明らかにする。プライマーゼがない場合、リーディング鎖の合成は効率的に開始されるが、30キロ塩基以上は進むことができないことが分かった。そのため、新生リーディング鎖の安定化にはプライマーゼが必要であると考えられる。DNA合成は、Pif1やPol32がなくても開始できるが、効率よく進行しない。また、間質性テロメアDNAはBIRの進行を妨げて終了させ、BIRの開始は転写レベルに比例して転写によって抑制されていた。BIRと転写の衝突は、正常な複製の間の転写によって生じる不安定性を上回るレベルで、変異誘発と染色体再編成を引き起こした。以上より、これらの結果は、BIRの機構やBIRがゲノム不安定性の一因となる仕組みについての基本的な知見をもたらすものだ。

