代謝:inceptorはβ細胞でのインスリンシグナル伝達の妨害により血糖を制御する
Nature 590, 7845 doi: 10.1038/s41586-021-03225-8
膵臓β細胞でのインスリンやインスリン様増殖因子1(IGF1)に対する抵抗性は、マウスで顕性糖尿病を引き起こす。従って、β細胞をインスリン感受性にする治療法は、糖尿病患者をβ細胞障害から保護する可能性がある。今回我々は、マウスβ細胞でのインスリン受容体(INSR)とIGF1受容体(IGF1R)のシグナル伝達の阻害物質を見つけ出し、inceptor(insulin inhibitory receptor;Iir遺伝子にコードされる)と命名した。inceptorは、INSRやIGF1Rに類似した細胞外システインリッチドメインと、IGF2受容体(IGF2R)でも見られるマンノース6-リン酸受容体ドメインを持つ。inceptorを欠失するノックアウトマウス(Iir−/−)は、高インスリン血症と低血糖症の兆候を示し、出生後数時間以内に死亡した。Iir−/−マウスの胎仔と出生後の膵臓の分子レベルおよび細胞レベルでの解析から、Iir−/−膵臓組織ではINSR–IGF1Rの活性化促進が見られ、その結果としてβ細胞の増殖促進と量の増加が起こることが分かった。同様に、成体マウスおよびex vivo膵島でのβ細胞特異的な誘導性Iir−/−ノックアウトは、INSR–IGF1R活性化促進とβ細胞の増殖促進を引き起こし、それがin vivoでの耐糖能改善につながった。機構的には、inceptorはINSR–IGF1Rと相互作用して、クラスリンを介したエンドサイトーシスを促進し、これが受容体脱感作につながる。inceptorの細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体を用いて、この物理的相互作用を遮断すると、inceptorとINSRが細胞膜に保持され、β細胞でのINSR–IGF1Rの活性化が維持された。まとめると我々の知見は、inceptorが構成的な経路の活性化からインスリン産生β細胞を保護していて、INSR–IGF1Rの感作や糖尿病治療の分子標的候補であることを明らかにしている。

