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コロナウイルス:弱毒生YF17Dベクターを用いた単回投与のSARS-CoV-2ワクチン候補
Nature 590, 7845 doi: 10.1038/s41586-020-3035-9
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が拡大する中で、安全で有効かつ即効性のあるワクチンの開発が必要とされている。迅速な緊急対応のために、いくつかのワクチンプラットフォームが活用されている。今回我々は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の候補ワクチン(YF-S0)の開発について報告する。YF-S0は、弱毒化した黄熱ウイルス17D株(YF17D)ワクチンをベクターとして用いて、切断が起こらない融合前型のSARS-CoV-2スパイク抗原を発現する。我々は、いくつかの動物モデルで、このワクチンの安全性、免疫原性、有効性を評価した。YF-S0は優れた安全性プロファイルを持ち、また、ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus)、マウス(Mus musculus)、カニクイザル(Macaca fascicularis)で高レベルのSARS-CoV-2中和抗体を誘導し、同時に黄熱ウイルスに対する防御免疫を誘導した。マウスでのプロファイリングから、体液性免疫は、好都合な1型ヘルパーT細胞への偏向を伴う細胞性免疫応答によって補完されることが分かった。YF-S0は、ハムスターモデルとカニクイザルでSARS-CoV-2による感染を予防した。さらに、YF-S0の単回投与によって、ワクチン接種したハムスターのほとんどで、わずか10日以内に肺疾患を防ぐ効果が得られた。まとめると、引き起こされる免疫応答の質と、単回投与後に防御免疫を達成できる迅速な動態により、この強力なSARS-CoV-2ワクチン候補のさらなる開発が支持される。